愁夜 その二

  月は水の満ちた盆である

  神獣は水に紫の炎を宿す

  

    月の雫は

    地に落ちる

  

  揺らさぬように

  こぼさぬように

  

  けれども気まぐれな風たちが

  水面を揺らしては

  音も無く水はしたたる

  

  月の雫は

  地に落ちる

  

    木々はざわめき

    葉陰の虫の羽を濡らす

 


1998.10.3
copyright(c) Yoshio Tsuchida All right reserved.